赤い電車のあなたへ



「龍太さん……?」


わたしは近くの岩にしがみついて起き上がった。


龍太さんを呼んでみたり周りを見渡したけれど、彼からの返事はないし姿もない。


本当に姿がかき消えてしまって、荘厳な森の雰囲気から神隠しにでもあったのかと信じそうになる。


ざわざわと木々がざわめく中でひとり。急にバサバサと鳥が飛び立って、わたしは頭を抱え身震いした。


けれども、わたしは思い直す。


龍太さんがいきなり消えるなんてない。きっと何か原因があるはずだ。


彼がくれたぬくもりや力強さに優しさ。たくさんの勇気。それを思い出したわたしはギュッと手のひらを握りしめ、痛む足を庇いながらさっき通りかけた場所に戻った。


わたしは龍太さんにおぶってもらえたからわからなかったけど、この近辺は岩場になっていて凹凸が激しい。


わたしは岩伝いに移動していき、ようやく龍太さんを見つけ出した。


けれども、龍太さんは崩れた岩場の下に埋もれていたんだ。


わたしが一緒に埋もれなかったのは、とっさに彼が放り投げてくれたから。

「……! 龍太さん!!」


わたしは足が痛むのも構わずに斜面を降り始めた。


わたしのせいだ……。


わたしが一緒にいたいからなんてわがままを思わなきゃ。


わたしは責任を感じポロポロと涙がこぼれる。けども、泣いてる場合じゃないと腕で拭った。


龍太さんを助けなくちゃ!


今ここにはわたししかいないんだから、わたしが頑張らなきゃ。


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