赤い電車のあなたへ
龍太さんが落ちた穴はこちらから見て深さが3メートルくらい。わたしは足場に気をつけながら、慎重に斜面を降りた。
わたしさえわがまま言わなきゃと責任を感じてたし、龍太さんがケガをしたりしたら嫌だ。
落ちたのがわたしだったらよかったのに!と思う。
龍太さんが痛い思いをするなら、代わりにわたしが痛い方が十倍ましだよ。
ピクリとも動かない龍太さんを見て泣きそうだった。
まさか……まさかだよね? 龍太さんは……違うよね?
わたしは最悪の状態を考えて膝が震えた。
どうしよう……
もしも龍太さんの息が……?
ううん、そんなこと考えない!
きっと龍太さんは大丈夫だよ。わたしが信じなくてどうするの?自分に喝を入れて気合いを入れ直し、わたしは両手でギュッと拳を作った。
ぐじぐじ言っていないの! 今は龍太さんを助けることだけを考えて。
わたしは痛む足を庇わずに一気に降り、龍太さんのもとに着いた。
しゃがんで彼の口元に手を当て、ちゃんと息がある事に安堵した。
幸い龍太さんが埋もれた瓦礫はさほど大きくなくて、わたし1人の力でも除けられそうだ。
わたしは躊躇わずに石や瓦礫を取り除きながら声をかけた。
でも、龍太さんは身じろぎもせず反応がない。