赤い電車のあなたへ
この危険な状況のなかでは、彼の笑顔しか思い出せない。
わたしは勇気を出そうとただひたすら龍太さんの事を思い返した。
彼の優しさや思い遣り溢れる言葉。
そのさなか、ふと思い出した。
『太陽は西に沈むから、それを基準に考えてご覧』
龍太さんは背負ったわたしに方角の見方を教えてくれていたことを。確か沈む太陽を背にして東を意識すると……
わたしが進んでた場所は見当違いもいいところだった。
進むべき方向が見えた。
わたしはギュッと拳を握りしめ、龍太さんに心の中で誓った。
(龍太さん、必ず助けを連れて戻ってきますから待っていてください!)
そして、わたしは再び信じた方向に進む。汗で服が張り付いても気持ち悪いなんて思わない。
藪で破れ服がボロボロになっても、肌が傷ついても、足が熱くて痛みがひどくなっても、疲れから足が鈍っても。
自分と龍太さんを信じて進む。