赤い電車のあなたへ



あきらめない。


わたしは今まですぐあきらめてきた。


それは逃げ場所があったからだし、わたしがいなくても良かったから。


でも、これはわたしにしかできないことなんだ。


滝のように汗を流し苦しくても無我夢中で進み……見えた。人工的な建造物が。


町ではないけれど、確かに観光客がいて……。


森から出てきたわたしは必死にたどり着き、助けを求めた。


「助けてください! 山の中で龍太さんが崖から落ちたんです」


「え、本当か! おおい、誰か連絡入れたれ!急いで山探しの準備するぞぉ」


係員のおじさんが大声で周りに知らせてくれ、安心したわたしは気が抜けてその場にうずくまった。


「おい、あんた大丈夫かね!?」


おじさんが心配してくれて、やっと他の人存在の嬉しさを感じる。

けれども、龍太さんが助からない限りは安心できない。


急遽召集された人たちで山探しの準備がなされたけど、わたしがしっかり記憶していたからか、割とスムーズに進めた。


足のケガを配慮し背負われたわたしが示した先には、確かに龍太さんが倒れていて。

無事に発見され救出された彼は、運ばれた町の松田診療所にて「脳しんとうを起こしただけ」と言われ、わたしは安堵して泣いた。


「良かった……龍太さん。本当に良かった」



< 284 / 314 >

この作品をシェア

pagetop