赤い電車のあなたへ
あきらめない。
わたしは今まですぐあきらめてきた。
それは逃げ場所があったからだし、わたしがいなくても良かったから。
でも、これはわたしにしかできないことなんだ。
滝のように汗を流し苦しくても無我夢中で進み……見えた。人工的な建造物が。
町ではないけれど、確かに観光客がいて……。
森から出てきたわたしは必死にたどり着き、助けを求めた。
「助けてください! 山の中で龍太さんが崖から落ちたんです」
「え、本当か! おおい、誰か連絡入れたれ!急いで山探しの準備するぞぉ」
係員のおじさんが大声で周りに知らせてくれ、安心したわたしは気が抜けてその場にうずくまった。
「おい、あんた大丈夫かね!?」
おじさんが心配してくれて、やっと他の人存在の嬉しさを感じる。
けれども、龍太さんが助からない限りは安心できない。
急遽召集された人たちで山探しの準備がなされたけど、わたしがしっかり記憶していたからか、割とスムーズに進めた。
足のケガを配慮し背負われたわたしが示した先には、確かに龍太さんが倒れていて。
無事に発見され救出された彼は、運ばれた町の松田診療所にて「脳しんとうを起こしただけ」と言われ、わたしは安堵して泣いた。
「良かった……龍太さん。本当に良かった」