赤い電車のあなたへ






朝露駅前から伸びる県道をとことこと歩く。


麦わら帽子と水色のワンピース。


それからエナメルのサンダル。


肩からショルダーバッグを提げて。


ちっちゃな頃からちっとも変わらない、懐かしい町並みを見ながらゆっくり進んだ。


昭和にタイムスリップしたような、古びていて味がある看板。


赤い公衆電話に塗装が剥げたビンの自販機、ちっとも変わらない近所の子どもが集まる駄菓子屋。


懐かしくなったわたしはちょっと寄ってみた。




出入り口には相変わらずいつからあるかわからない駄菓子がいっぱい。


練り消しゴムにアイドルのブロマイド写真。香りつき消しゴム。麩菓子にお煎餅。

棒状のチョコレート菓子。イチゴを模した棒付きのチョコレート。サクサクの十円お菓子。ポリポリが楽しいチキン味のスナック。


変わらないな~。


カゴを取ってそのなかにお菓子を入れてると、お店の奥からキンキン声が響いた。


「あらぁ~! もしかして鞠(まり)ちゃんか?」


かっぽう着を着て白髪を後ろで束ねた幸子おばあちゃんだ。


もう88歳にもなるけど、かくしゃくとして元気いっぱい。


健太叔父さんもわたしの父さんも、そのまたお祖父ちゃんもお世話になったんだ。



< 3 / 314 >

この作品をシェア

pagetop