赤い電車のあなたへ
「学生としては、ね」
龍太さんはそんな言葉を付け足し、よしよしとわたしの頭をなでた。
「……学生?」
「ああ。僕は大学を休学してるから……まだ2年生のままだろうね。
今から追いつくために頑張って、なんとか卒業するよ」
そのころには鞠ちゃんも高校を出てるよね? と龍太さんは微笑む。
「貴史や良子の事もきちんとけじめを着けてくる……全てを終えてそれでも君が変わらない気持ちでいてくれたら……」
龍太さんはそこで言葉を切り、きっと赤くなったであろうわたしの顔を見た。
やっぱり。松田診療所に初めて来た時に多香子さんに告げた言葉を聞かれてたんだ、とわたしは顔から火が出るかと思えた。
「僕は、絶対に忘れたりしないよ。それに時々手紙をあげてもいいかな?」
三年後にまた逢おう――。
「……っ! 龍太さん!」
わたしは自分から龍太さんの胸に飛び込み、彼にしがみついた。
「待ってます……わたしはずっと……ずっと待ってます」
わたしは泣きじゃくりながら、彼に約束をした。
きっとまた逢おうと。
窓から射し込む夜明けの柔らかな光が、室内の様々な色を浮かび上がらせた。