赤い電車のあなたへ
夏樹が作ってくれた朝ご飯を、農作業が終わった叔父さんや夏樹とともに食べた。
けど、いつもより口数が少ないのは、明らかに夏樹の様子がおかしいから。
それがわかってるからか、叔父さんもしつこく訊かない。
ただ。
「若いからってあんまり無茶するんじゃないぞ。無謀と勇気は違うという意識を持て」
そんな一言を息子に向かって言った。
「わかってるよ。父さんがいつも言ってることだもんな」
そう答えた夏樹は伏せがちだった目を真っ直ぐ向けたし、よく喋るようになって憎まれ口もたたく。
「ほら、鞠。おまえもう少し口をすぼめて食えよ。カバ並みにでっけぇ口だな」
……カバですか、わたし。
「ふんだ! いいもん。わたしどうせ色気も何もないから」
あっかんべえをしながら、あの人と食事したらこんな事じゃいけないな、と考え直す。
も、もう少し礼儀作法を覚えた方がいいかな。とクセになってる迷い箸や寄せ箸を自粛した。
万が一も可能性なんかないのに、ね。
本当にどうかしてる。