赤い電車のあなたへ
「おはよー、鞠!」
ほたるが元気よく挨拶してくれたけど、わたしの心は重い。
朝9時の約束通りに、わたしと夏樹は待ち合わせの朝露駅に着いたのだけど。
「……おはよう、ほたる。おはようございます、立野先輩」
なんとか挨拶はしたものの、それ以上話したくなくて口を閉じた。
すると、突然ほたるがツカツカと夏樹に歩み寄って問いただした。
「夏樹先輩、また鞠になにか無神経な事言ってないですか?」
「は、俺?」
夏樹は訳が分からない、という顔でほたるに答えた。
「……別に……なんにもねえよ。あったとしても橘には関係ない」
「関係ないことないです! あたしは鞠の友達で夏樹先輩の後輩ですからっ!」
夏樹に食ってかかるほたるの気の強さが頼もしい。
けど、夏樹は全然関係ないのに。わたしが諫めようと口を開けば、先に立野先輩が言葉を出した。
「まあ、どっちも鞠ちゃんを大切にしてるから。そうカリカリしない。
特に、夏樹。おまえ、鞠ちゃんが大切ならもっと気を配れよ」