赤い電車のあなたへ
「さあさあ、ケンカしてないで行った行った」
立野先輩は夏樹とほたるの背中を押し、2人を強引に駅舎に入らせた。
「お、おい立野!」
「立野先輩! 自分で歩けますからっ!」
2人から抗議されても、流石に手を緩めない。彼の半ば無理やりな執り成しで、いつの間にかけんか腰のほたるの機嫌も直ったみたい。
「ほら、ジュース選んで! 僕のおごりだから有り難く思ってよ」
駅舎のなかに唯一ある自販機で、立野先輩は100円玉を4枚入れ、まず自分から選んだ。
1本100円のアルミ缶のジュース。
わたしには懐かしいミルクセーキや炭酸飲料もある。
「サンキュー、立野」
夏樹もほたるも立野先輩にお礼を言って飲み物を選んだ。
わたしは何だかいつもの炭酸飲料が子どもっぽい気がして、苦手な緑茶を選んだ。
コーヒーはまだ苦くてダメだけど、緑茶なら飲めるかなと考えて。
あの人と会えたとき、ミルクセーキなんてまるっきり子どもだからね。なんて考えてしまうバカなわたし。
今朝見た自分の容姿もわきまえずに。バカみたい。