赤い電車のあなたへ
「こんにちは、お久しぶりです」
「まあまあおっきなったねえ! 見違えたわ。今いくつなった?」
「中3……もうすぐ15だよ」
最後に朝露に来たのは、確か小6の夏休みだったから確かに久しぶりだ。
それでも変わらない景色と人間にわたしは安堵感を覚えてた。
「あらあら……だからすっかり女の子になったんだねえ。夏樹くんはびっくりするだろね」
わたしの成長ぶりが嬉しいのか、幸子おばあちゃんはかっぽう着で涙を拭う。
「夏太郎もきっと本望だろうよお」
夏太郎とおばあちゃんが呼んだのは、わたしのお祖父ちゃん。
わたしが小6の夏休みに朝露に来たのは、お祖父ちゃんのお葬式のため。
あれ以来朝露には来なかったし、健太叔父さん達とも会わなかったから。
「そういえば夏樹が自転車漕いで駅に向かったが、もしかして鞠ちゃんを迎えに行っただか?」
「え!?」
幸子おばあちゃんが思い出したように言ったから、わたしは元来た道を振り返った。
「夏樹が通ったのはいつぐらい?」
「確か30分ぐらい前だったなあ。ラムネを2本買ったから、珍しいと憶えてただよ」