赤い電車のあなたへ
「へえ、そんなことがあったんだね」
ほたるは目を丸くして驚いてた。
「あたし、鞠はてっきり夏樹先輩を好きなんだって思ってた。幼なじみだし……仲いいし」
ほたるはやっぱりズバズバ言いたいことを口にする。
「夏樹先輩だって、鞠のこと……」
ほたるの勝手な憶測に、わたしは可笑しくなって吹き出した。
「あはは、なにそれ? あり得ないって!
いい? わたしが好きなのは電車で見た笑顔のひと。
夏樹は従兄で幼なじみ。お兄ちゃんみたいなもん。
夏樹だってわたしの事は手の掛かる妹、って思ってるだけ。
それ以上には絶対にならないから、安心してアタックしなよ」
「アタックって……なんか古いよ鞠」
ほたるのツッコミはともあれ、わたしはない胸をドンと叩いてほたるに請け負う。
「よし、この鞠さまにお任せあれ! ほたると夏樹がうまく行くように協力するからさ」
「安請け合いじゃないよね?」
「ぎ、ギクッとな」
流石はほたる。勢いで言い出したコトをちゃんと見抜いてる。
「でも、ありがとう。お礼にあたしも電車の人捜しを手伝うね」
「え、いいの!?」
まさか協力者が現れるなんて思ってもみなかったから、驚きながらも嬉しかった。