赤い電車のあなたへ
「あ~なんか面白かったな。追いかけっこみたいで」
夏樹とほたるを2人っきりにするため、立野先輩と坂道を駆け上がったら。先輩まで面白がってくれた。
「むかし夏樹とよく遊んだ“ケイドロ”を思い出したな。
鞠ちゃんもたまに混じったろ? 夏樹がよく引っ張ってきたから」
立野先輩の思い出話に、ああと懐かしく振りかえる。
ちなみにケイドロってのは、要するにお巡りさんと泥棒に別れて、どちらの陣地が先に泥棒を捕まえ牢屋に入れられるかを競う屋外ゲーム。
朝露の子どもはテレビゲームをするより、みんな外で遊ぶことを好む。
わたしも朝露に来るたびに混じらせてもらったんだ。朝露の人たちは人見知りしないから、わたしも気持ちよく過ごせた。
たまにしか入らなくてもみんな覚えていてくれて、昔からの友達みたいに接してくれた。
「そういえば、ケイドロで夏樹の必死の顔覚えてる?あれ傑作だったよな」
そう。立野先輩が言うように、夏樹はケイドロで一番最後まで捕まらなかった。
わたしの手を引いて、捕まるまいと必死に逃げ回った。