赤い電車のあなたへ
もちろん、とわたしは答えた。
「わたしの方がチビなのに、何をしても夏樹は必死で。振り回されて大変でした」
2人でクスクス笑うと、ここにほたるがいなくて良かったと思う。
ほたるは高校に入学するまで朝露に来たことなかったから、こんな思い出話されても蚊帳の外で楽しくないに違いないし。
仲間内だけで盛り上がっても、知らない人からすれば面白くもなんともないから。
わたしがよくそれで悲しい思いをしたからな……孤独感や疎外感ほど寂しいものはないし。
「そうそう、その時僕思ったんだ。夏樹は従妹が大切なんだってね」
立野先輩のそれに、相づちをうつ。
「まあよく転んだりして危なっかしかったですからね。手が掛かる妹みたいで見放せないんですよ」
「ん~? そうかなあ」
なぜか立野先輩は立ち止まって顎に手を当て、チラッと後ろに目を遣る。
かなり遠くに2人の姿が見えた。
「どっちかって言うと、夏樹は鞠ちゃんを……」
立野先輩がそう発言した途端に川向こうから風が吹き付け、草花を激しく揺らしざわめかせた。