赤い電車のあなたへ






「ま、確かに夏樹は“変”だね」


立野先輩もそう言うと、足元の草を摘んで舟を作り上げた。


彼がそれを川に向かい投げると、舟は川面に浮かんで流されてゆく。


そんな様子を見守った立野先輩は、腰に手を当てて立ち上がった。


「よっこらしょっと。夏樹が鞠ちゃんを大好きなのは確かだね。
けど、それがどういう“好き”かは自分でちゃんと考えなよ」


「………」


わたしは立野先輩に答えず、八つ当たり気味に石を投げたけど、流れてゆく草舟にかすりもしない。


今は、そういうことを考えたくなかった。


ただあの人に逢いたいだけなんだから、わたしの心を乱す言い方はしないで。
そんな無言の抗議の現れだった。


「ま、でも。それは君たちの問題だから、それはそれとして」


立野先輩は何かを横に置く仕草をしてから、わたしの痛い点を突いてきた。


「今の鞠ちゃんは、電車の人にどうしても逢いたいわけでしょ?
でもさ、現実問題として毎週こんなに電車代使ってたら、お小遣いが足りなくなるだろ?」


確かに、とわたしは言葉に詰まった。距離が延びれば延びるほど、お小遣いだけでは心許なくなる。


流星狭に来る片道だけで600円、往復で1200円掛かってる。毎週土日に来たら月額でマイナスになっちゃうんだ。


これはかなり頭の痛い問題だった。



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