赤い電車のあなたへ
「はい、確かにピンチにはなりますけど?」
立野先輩が何を言いたいのかがわからず、わたしは必要以上の返事をしなかった。
「ま、聞きなさいって」
まあまあ、と立野先輩は手を振ってわたしを見た。
「駅の近くにある駄菓子屋に幸子おばあちゃんいるだろ?」
「あ、はい。知ってますけど」
今年の秋には90歳になる、朝露の全てを見守ってきたおばあちゃん。生まれた時からおばあちゃんがいないわたしには、本当のおばあちゃんみたいで。懐かしさと慕わしさを感じてた。
「幸子おばあちゃんがどうかしたんですか?」
そういえば最近忙しくて駄菓子屋に寄ってないや、とわたしはのんびり考えていた。
「最近おばあちゃんも疲れ気味らしくてさ、店番が欲しいって言ってたんだって。
まあずっとはムリだけどさ。
学校帰りの2時間と休みには1日。代わって店番してくれたら謝礼をくれるってさ」
立野先輩が紹介してくれたのは、要するにアルバイト。朝露にいる限りアルバイトはできない、と半ば諦めていたわたしには朗報だ。