赤い電車のあなたへ






「すいません、こんな人を見かけませんでしたか?」


わたしは思い切ってその岩場に居る人達に訊いてみた。


男性はわたしが描いた絵を手にし、眉間にしわを寄せ考えてる。


そりゃあ仕方ないか。洒落たシャツ皮のズボンにジャラジャラのシルバーアクセサリーって、どう見てもただの観光客って感じだし。


「ん~わっかんね。和美わかるか?」


ボリボリと金髪アタマを掻いた男性は、恋人らしき腕を組んだ女性に訊いた。


女性はこれまた派手なお化粧で、ツヤツヤ薄手のキャミソールとショートパンツとサンダルって格好。


「え~なに? 知らなーい! アタシテッツーが一番好きだし~他のオトコは見えないんだあ」


「はっはっは。和美のかわいさにはかなわないさ~」


こいつう、なんて人差し指で恋人の額をつつくから、恥ずかしくなったわたしはお礼を言って逃げ出した。


その後も行く先々で訊ねてみた。


絵はお世辞抜きでとても上手いって立野先輩が褒めてくれたから、それはまずくないと思うけど。


流星狭に着くまで10人には訊いたけど、何の手掛かりも得られなかった。



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