赤い電車のあなたへ






流星狭に着いてからは恥をしのび、片っ端から訊ねてみた。


化石の展示館に来るまで更に20人ほどに訊いたものの、「知らない」のオンパレードで。半ばうなだれたわたしに、立野先輩が仕方ないさと苦笑い。


「去年の7月だろ? 一年も経ちゃ、余計にわからなくもなるさ」


「…………」


そりゃあそうかもしれないけど、だからといって簡単にあきらめられないよ。


だって、わたしの初恋の人なんだもん。


ただ、ただ逢いたい。
あの笑顔が見られたら、それだけでいいんだ。


記憶が薄れるどころかますます胸に焼き付いたそれは、わたしに切ない気持ちをもたらす。


逢って、すこし話せたらそれでいい。それ以上は望まないから。


朝露の龍神さま、どうかわたしを赤い電車のひとに逢わせてください。


自分がどんな人間かわかってます。あの人に好きになってもらいたいなんて、大それた望みなんて決して持ちません。


あの人に逢えるなら、嫌いな勉強も運動も頑張ります。ピーマンとレバーも食べますから。


どうかどうか、よろしくお願いします。


そんなお祈りを龍神塚にして、わたしはみんなと展示館に向かった。



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