赤い電車のあなたへ
そしてわたしは絵を取り出し、ほたるに今までの経過を話した。
「う~ん、こうして見るとやっぱり鞠は絵が得意みたいね。将来絵描きになれるんじゃないの?」
画用紙を広げた友達に称賛され、わたしはちょっと得意になる。
「まあ、ね。絵を描くのだけは昔から得意だったし」
「それより、この人が着てる服は確かにアウトドアファッションだよねえ。
鞠が龍ヶ縁に行こうって考えたのむりないわ。
あっちはキャンプや登山やハイキングなんかで有名だもんね」
さすがは大親友のほたる。 わたしと同じ感想を持ったみたい。
「だよねえ。だから、次は龍ヶ縁に行こうかなって思ったんだ」
わたしは自分の考えが間違ってないと確信した。
この調子で片っ端からあの人のことを訊いて回って、情報の断片だけでも掴まえられればいいな。
「ん、そういえばこの展示館にいる人に訊いた?」
ほたるに訊かれて首を横に振れば、彼女は腰に手を当ててつま先で床を鳴らした。
「ほら、ダメじゃない。情報なんてどこにあるのかわからないんだから」
ほたるは絵を手にすると、すぐ近くの係員さんに声をかけた。
「あの、すいません! こんな人を見かけたことありますか?」