赤い電車のあなたへ



「あ~? なんだね~?」


おじいちゃん係員さんは耳が悪いみたいで、耳に手を当てて訊き返してきた。


「だから、この人が~!」


大声で怒鳴りつけたほたるは注目の的で。図らずも周りに人が集まる結果となった。


でもそれが、意外な結果をもたらした。


「あれ、その絵よく見せてもらえる?」


ひとりの観光客らしい女性が、わたしが描いた絵を引き寄せてまじまじと見る。


「う~~ん……たぶんだけども。去年ここに来た時に石龍の駅で見た気がするわ」


「え、ほ、本当ですかっ!?」


わたしは思わず体を乗り出したけれども、女性はなぜか浮かない顔をしてる。


「ええ、たぶん間違いないと思うけど。
でも、覚えてたのはね……あまりよくない印象があったからね」


「え!?」


よくない印象があったなんて、いったいどんな?と、ドキドキしながら待って語られた内容は。


「石龍では綺麗な女性とベタベタしてたからよ。人目をはばからず。抱き合うまでしてたし……子どもやお年寄りの目の前でなに考えてるんだ!とダンナが怒ってたわね」


わたしの胸をぺちゃんと潰すものだった。



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