赤い電車のあなたへ
ほたるはそんなわたしを、ただそっと抱きしめてくれた。
「いいよ、鞠。泣きたいなら泣きなよ!我慢はよくないから」
ほたるの優しさに目の奥が熱くなる。このまま寄りかかって泣いてしまえたら、どんなに楽だろう。
でも……
でもね。
それじゃあ以前と何も変わらないんだ。
わたしが克服すべきなのは、他人への甘え。
何かあればすぐに頼ろうとして逃げる。そんな甘ったるい考えじゃ、なにも出来ないし進まない。
こんな程度で諦められるなら、寂しいお母さんを故郷に独りにしてまで朝露に来た意味がない。
そんな軽い決意じゃなかったはずだよ、とわたしはほたるの優しさに甘えない道を選んだ。
「ありがとう、ほたる。でも、いい。
あの人の口から直に“好きな人がいる”って聞いて、本当に失恋出来たら胸を貸してもらうよ」
「わかった。鞠がそういう決意なら止めないわ」
ほたるはポンポンとわたしの背中を叩いてくれた。
「そのかわり、あたしも週1で付き合わせてもらうわよ」
そんな申し出をしてくれた親友を、どれだけ嬉しいと思っただろう。わたしはひたすら「ありがとう」と感謝をした。