赤い電車のあなたへ
「へんだ! 女とつるんだら女々しくなっちまわあ」
9歳ながらガキ大将の勉くんは、胸を反らして空威張りしてる。
まったく仕方ないなあ、とわたしはハンカチを取り出して、鼻と涙でぐちゃぐちゃな美沙ちゃんの顔を拭いた。
「ほら、茉莉花お姉さんやお姉ちゃんとゴム跳びで遊ぼっか?」
「うん、遊ぶ」
ゴム紐をわっかにして結んだのを取り出して、やっと美沙ちゃんは機嫌を直した。
「あ、あたしもやる~!」
「わたしも!」
お店の隣にある空き地で、毎日毎日学校帰りの子ども達が大はしゃぎ。
朝露の家庭は3人兄弟なんて珍しくないから、すごく賑やかだ。祖父母と孫は一緒に暮らすのがあたりまえだし、なかには四代に渡って暮らす家庭も珍しくない。
だから、朝露で10人家族は特別じゃないんだ。
「あ、夏樹兄ちゃんだ!」
一人の男の子が指をさすと、わっと他の男の子が駆け寄っていく。その先にいつもの夏樹の姿があった。
「夏樹兄ちゃん! 虫の捕まえ方教えて」
「違うよ! 俺と一緒に秘密基地作るんだい!」
夏樹は近所の男の子たちに懐かれ、頼られてた。