赤い電車のあなたへ
陽がかなり傾くころ、親ごさんたちが子どもを迎えに来る。
すっかり遊び疲れた子ども達は、眠いとぐずったりお腹が空いたとはしゃいだりする。
「ぺんぎん屋」は親たちも子ども時代にお世話になったから、みんな優しく見守ってくれている。
奥の和室で寝込んでる幸子おばあちゃんに大丈夫かと声を掛けたり、挨拶をする人達も少なからずいた。
「おばあちゃん、今日はお店しまうね」
夏樹に手伝ってもらいシャッターを閉めた後におばあちゃんのいる和室に上がると、朝露の少し遠い東地区に住む孫娘さんがやって来てた。
「鞠ちゃん、夏樹くん。いつもありがとうね。私がこんな体だから店番できなくて困ってたの。ありがとう」
孫娘の梨花(りか)さんは、ただ今5人目を妊娠中。臨月を翌月に控えてるから、確かに店番なんてできないよね。
「いえ、こちらこそ助かります。いろいろ入り用なので」
夏樹の手前詳しくは話せなくて、わたしは曖昧な言葉で濁した。
「それに、なかなか楽しいです。童心に帰ったみたいで」
「そう言ってくれると助かるわ」
梨花さんはそう言って、小さなぽち袋をカバンから取り出して渡してくれた。