赤い電車のあなたへ
わたしがその話をしたら、ほたるは一緒に喜んでくれた。
「すごい! ならその写真でもっと手掛かり集まるかもしれないね」
「うん、わたしもそう思うよ」
係員さんから譲ってもらったプリント写真を胸に抱き、わたしはあの人を思う。
後ろ姿だけど、初めてあの人が写った写真。それを見ていたら、わたしもあの人と並んで写りたいと思った。
そんなことは現実に叶わないかもしれないけど。
わたしがそんな希望を話したら、ほたるは現実的な心配をした。
「そうは言うけど、鞠はカメラ持ってるの?」
そう、それが問題なんだ。
「叔父さんが持ってるといいんだけど」
普段はカメラなんて関心がなかったし、叔父さんが持ってるかはわからなくて。希望しか言えないな。
「夏樹、叔父さんってカメラ持ってたっけ?」
わたしは従兄に話を振ってみたけど、夏樹から答えはなくて。彼はなんだかぼんやりと足元に視線を落としてる。
どうかしたのかな?と疑問に思ったわたしは、足を止めた夏樹に向かって声を張り上げた。
「こ~ら夏樹! ボーっとしてると山神様に喰われるぞ!」
「鞠ったら。そっとしといてあげなよ」
わたしが話しかけただけなのに、ほたるがなんでそんなことを言うのかが不思議だ。
いつもなら一緒に心配するくらいなのに。