赤い電車のあなたへ



「へ、へえ……よかったじゃん。初デートだね! なら楽しんでこないと」


わたしは多少複雑な気持ちを隠し、友達を鼓舞した。


「夏樹って奥手だから、女の子側からアピールしないとね。ほたる頑張って!」


「う、うん。もちろん頑張るよ! 鞠も初恋の人探し頑張ってね。きっといい結果が出るよ!こんなに頑張ってるんだから」


「うん、ありがとう」


そうだ。わたしは電車の人を捜す事を最優先にしなきゃ。


考えてみれば夏樹だって17歳の健全な男の子なんだから、好きな女の子ができてもおかしくない。むしろいつまでもいとこにべったりだった今までが不自然なんだから。


チラッと後ろを見ると、いつの間にか夏樹が立っていて。
その口が開いて最初に呼んだのは。


「ほたる」

だった。


「もしかして話しちまったのか?」


「うん。先輩と明日街に行くことも。ちゃんと教えておかないと」


呼び捨て……。


夏樹がわたし以外の女の子を呼び捨てにするのを初めて聞いた。


他の女の子がいてもいつもわたしを先に呼ぶのに、わたしを置いてほたるに話しかけたのも初めてだった。



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