赤い電車のあなたへ



それにしても、なんだろう?


ひとりだけ置いてきぼりにされたような寂しさは。


もと住んでた土地での学校でもシカトされたから、似たり寄ったりの思いはした。でも、これは微妙に違う。


なんだろう?


ほたるに一瞬――と思った。


よかったねと思うのに、寂しさや疎外感とは違うこの気持ちは。


「観にいく映画はね、邦画で○○の花ってタイトルなんだ。夏樹先輩がずっと観たかったって」


ほたるが愉しげに話すのは、わたしが知らない夏樹の話題。


「あれ? 確かほたるが観たかったって言ってたよな」


やっぱり夏樹が話しかけたのは、わたしではなくほたるで。


「え? そうかな」


2人が並んで歩きだしたから、わたしは少し下がって2人の後ろを歩いた。


いつの間にこんな打ち解けたか、なんて愚問だよね。


この1ヶ月間ほたるは夏樹のそばでアピールし続けていたんだ。


特にこの半月は夏樹からも話しかけるようになってたし、ちょっとした用事は頼む仲になってたし。いつかはこうなるとわかってたんだ。



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