赤い電車のあなたへ
「よかったね、ほたる。夏樹。2人で楽しんできてね!」
わたしはそう言ってほたると別れ帰宅した後、夕ご飯を準備するために台所に立った。
自然とため息が出てくる。
そっかあ。
夏樹とほたる、付き合いだしたんだ。
寂しい気持ちは仕方ないよね。友達といとこにお互い大切な人が出来て、わたしは二の次になったんだし。
でも、よかった。
ほたるはずーっと夏樹が好きだったって言ってたんだ。
いじめられた小学生の時一時朝露の親戚に預けられて、同じ小学校に通った夏樹が優しくてすぐ好きになったって。
知らなかった。むかし夏樹とほたるにそんな関わりがあったなんて。
わたしは夏休みくらいしか朝露に来なかったし、どちらかといえば夏樹が我が家に遊びに来る回数が多かった。
けど、夏樹はほたるのことひとことも話してなかったのにな。もしかして、夏樹もほたるが好きになってたから?
夏樹って、肝心なことはいつも口にしないから。
男の子って口下手って言うし、やっぱりそうなのかもしれないな。
わたしは夕食の大根を煮ながら、ボーっとそんなふうに考えた。
何かが終わり、何かが始まった。そんな日なのかもしれない。