赤い電車のあなたへ



わたしは朝ご飯を昼食のおにぎりのあまりで済ませて、6時25分発で朝一番早い赤い電車に乗った。


なんとなく叔父さん家に居るのは居たたまれなくて。


どうしてか、ほたるに会うのも寂しい気がしたからか。


(あの人の手がかりが見つかるからかもしれないからだよ。だからそわそわして仕方ないんだ)


そうだ。あの人が龍ヶ縁に行ったのは間違いないんだ。


龍ヶ縁には一度探しに行ったけど、闇雲に探すだけで成果はなかった。


けど、今回は他の駅の係員さんに具体的な話を聞けたし、写真もあるから。だいぶ範囲が絞り込めるかも。


わたしはポケットから写真を取り出し、後ろ姿のあの人を眺めた。


今、あなたはどこにいますか?


やっぱり恋人はいるのかな?


どんな仕事をしてるんだろう。


何が好きなんだろう。


龍ヶ縁に来たのは仕事? 趣味? それとも別の目的?


家族はどんな人がいるのかな。どんな話し方をして、どんな表情をするんだろう。


でも、わたしは笑った顔だけは憶えてる。

ほら、今も。


鮮やかに思い出して胸が高鳴る。


わたしは知ってる。


あたたかい笑顔ができる人なんだって。



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