赤い電車のあなたへ



「あの……去年の夏ごろにこの人を見たことありますか?」


「う~~ん……この帽子被った人かね?」


「はい。写真なら……後ろ姿ですがこれです。ここに写ってる人です」


「どれどれ」


3人いる龍ヶ縁の駅員さんに訊ね回って、今は最後の1人。
写真と絵を見比べる駅員さんをドキドキと見守っていだけど。


「いや、悪いけど記憶にないねえ。1年前なら特に。1日何百人と乗り降りするからね。何か起きた時なら覚えてるだろうけど」


「そうですか……お時間を取らせてすいませんでした」


がっかり来たけど、わたしのために貴重な時間を割いてくださったのたから、と顔に出さないように務めた。


「いやいや、こちらこそ役に立てなくて申し訳ない。その代わりと言っちゃなんだけど、龍ヶ縁の龍太郎じいさんを教えてあげるよ」


「龍太郎おじいさん……ですか」


聞き慣れない名前に、いったい誰かと訝しく思う。前回龍ヶ縁に来た時は話題にも上がらなかったし。


「龍太郎じいさんはね、龍ヶ縁のガイドを子どもの頃からやってたんだ。
えらく記憶力がいいからね。もしかしたら何か覚えてるかもしれないよ」


そう言って駅員さんは、龍太郎おじいさんが住んでる場所を教えてくれた。



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