赤い電車のあなたへ
龍ヶ縁の地理に詳しくないわたしは、駅員さんに描いてもらった地図を片手に険しい道を歩いた。
白いレギンスに最近買った水色のチュニックっていうオシャレはしたけど、歩き回るから足元はスニーカーを履いてる。
龍太郎おじいさんのお家はかなり離れた場所にあって、山あり谷ありを進む……なんて大げさと思ったけど。
崖っぷちの細長い道を通らなきゃいけない時は、よほど引き返そうかと思った。
駅員さんも「龍太郎じいさんは気まぐれでいつ来るかもわからないから、直に会いに行った方が確実だけど。途中が危険だからあまりお勧めしないよ」って言ってたし。
それでも、せっかく情報をくれた駅員さんの好意を無駄にしたくない。
わたしは浮き立ったミーハー気分であの人に会いたいわけじゃないもの。
本当に好きで、眠れなくなるほど好きで。ただ逢えたらって、それだけを思って頑張って。
今まで自分1人ではなにも出来なかったわたし。何をするにもどうせダメだ、とすぐあきらめて楽な方へ逃げ出したわたし。
そんな甘い自分を変えたくてたまらなかったし、変えたいから。
せめてあの人に自力で逢えたなら、自分の何かが変わる気がするんだ。