赤い電車のあなたへ
「ニャン」
「バウ!」
どこからかひょこっと三毛猫が出てきて、犬に声をかけたら吠えるのを止めた。
「ナーオ」
三毛猫は犬の背中に飛び乗り、そのまま座り込んですっかりくつろいだ様子。犬も心得たものか、そのままそっと地面に寝そべった。
犬から解放されてホッと息をつくいたわたしは、畑から奥へ向かい歩いてみた。
“むかしむかし”
そんな出だしで始まる民話が似合いそうな、茅葺き屋根の木造の一軒家が見えてきた。
縁側に近い庭ではおじいさんが薪をまとめてて、なんだか昔話の世界に入り込んだみたいだ。
スズメたちがおじいさんの周りで戯れていて、おじいさんは時たま手を休めて何か撒いてあげてる。
「よし、たんとおあがり」
おじいさん近くの縁側によいしょ、と腰を下ろすと、ニコニコとスズメの様子を見ていた。
意外。こんな辺鄙な場所に住んでるから、もっと頑固そうなおじいさんかと思ってたし。
それでも、知らない人に話しかけるのはいつだって緊張する。わたしは拳を握って意を決すると、庭を横切っておじいさんに歩み寄ってみる。
「こんにちは」
ぺこんと頭を下げると、おじいさんもそれに応じて頭を下げてくれた。