赤い電車のあなたへ
けど、おじいさんは耳に手を当てて訊き返してきた。
「あ~? なんて言ったかもう一度言ってくれんか~?」
「こんにちは」
「あ~~?」
「こんにちは!」
「あ~~っ!?」
「こんにちはっ!!」
「あ゛~~~っ???」
「こ・ん・に・ち・は・~~ッ!!!」
最後にはもう半ばヤケになって、おじいさんの耳元で声を張り上げた。もう声なんか出ないよっ!
「あ~~こんつはぁ」
おじいさんはコクコクと頷いて、隣に座りなさいと身振りで示した。
「こんな辺鄙な場所までよう来なすった。お茶を淹れてくるから、ちょっと待ってなあ」
よっこらしょ、と縁側を降りると、一度石段を上がって家の中に入っていった。
「どうそお構いなく!」
奥に向かって声をかけたけど、たぶんおじいさんには届いてないだろうな。
それにしても。こんな調子でお話しないといけないのかなあ?
あの人が龍太郎おじいさんと決まったわけじゃないけど、彼ならいろいろ訊きたい事がある。
それ全てを聞くのに今日だけで足りるのかなあ?って。おじいさんの耳の遠さで心配になった。