赤い電車のあなたへ
そうだ! とわたしは気付いた事があった。
会話がダメなら、筆談って手段があると。
幸いスケッチブックとサインペンを持ち歩いてるから、ガサガサとカバンから取り出した。
スケッチブックを捲って何も書いてない白紙を前に、いったいどう質問したものかと考えて。やっぱり直接的に訊いた方がいいな、と質問事項を大きな字で丁寧に書いた。
「おまっとおさんよ」
おじいさんはお盆にお茶と大福みたいなのを持ってきて縁側に置いた。お礼を言うのにさっきと同じやり取りを繰り返して、やっぱり筆談が正解と痛めた喉に思う。
お茶をいただいて落ち着いたころ、わたしは最初に書いた文面を見せた。
『わたしは清川 鞠といいます。人を捜しています』
「あ~~……鞠ちゃんかあ。いいお名前だなあ~~」
おじいさんはコクコクと頷いて、ぼーっと目の前の山々を見上げた。
「そういや清川っちゃあ……夏太郎と同じ名前だなあ」
「!」
夏太郎はお祖父ちゃんの名前だ!
『清川 夏太郎はわたしの祖父です。もしかして知ってますか?』
「あ~~知ってるもなにも……おらたちゃぁ幼なじみだよ」
おじいさんがお祖父ちゃんの幼なじみ……。
意外な偶然に、知らず知らず胸が鳴った。