赤い電車のあなたへ



「夏太郎はなあ……モテなかったからなあ。だのにみんなの憧れの美子さんを射止めた時は、みんなびっくりしただよ」


自分が星野龍太郎だと名乗ったおじいさんは、知らないむかし話をしてくれた。


「2人は誰もがうらやむほど仲がよくて、将来は結婚すると思ってたのじゃがな……」


龍太郎おじいさんの話を聞いてて、そういえばとわたしは思い返した。


お祖母ちゃんの名前って、美子だったっけか?


わたしが小2の時に亡くなったお祖母ちゃんとは、数回しか会った記憶しかないけど。いつもお祖母ちゃんとしか呼ばなかったし、周りも名前で呼ぶ人はほとんどいなかったから。


お祖母ちゃんの名前は何だったかな?


「じゃが、夏太郎と美子さんは結局結ばれなんだ。美子さんは親が無理に決めた相手と結婚させられたからな……」


「そうだったんですか。お祖父ちゃんも美子さんも気の毒だわ」


わたしは思わずつぶやいた。たぶん龍太郎おじいさんには聞こえてはいないけど。


「まあ、それで夏太郎は数年後幼なじみと結婚したんじゃが。そうか、おまえさんは夏太郎の孫か」


龍太郎おじいさんは、うんうんと1人うなずいていた。



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