赤い電車のあなたへ
それから、龍太郎おじいさんはいろんな話をしてくれた。
夏太郎お祖父ちゃんとどんなふうに過ごしたか。
よく知らなかった幼なじみのお祖母ちゃんのエピソードだとか。
「そういやあ涼子も絵が得意だったなあ。よく学校の写生大会で金賞取ってな。やっぱ血は争えんわ」
涼子っていうお祖母ちゃんの名前も初めて知ったし、お祖母ちゃんとお祖父ちゃんがいとこだったなんて事も初耳だよ。
みんな朝露が大好きだったんだなあ……と。66歳になる龍太郎おじいさんは、懐かしそうな目を遠くの山に向けた。
龍太郎おじいさんはお父さんが龍ヶ縁で働いてたらしい。
それでお母さんと一緒に朝露に住み、日曜日とかはよく龍ヶ縁に行って手伝ったとか。
やがて、5歳年上の女性と20歳で結婚するも、結婚生活は3年で終わり、女性は幼い息子を連れて出ていったとか。
彼女都会人だから、こんな僻地の不便さに我慢ならなかったと。
龍太郎おじいさんは数年後に再婚して、龍ヶ縁のガイドをしながらここで妻と2人で暮らした。
子どもはできなかったから2人で年を取ろうと誓った数年前、奥さんは病気で亡くなったらしい。