赤い電車のあなたへ
「この年になるとなあ……寂しいもんだ。知り合も親戚も次々と亡くなってくでなあ……訪ねてくれる人もようおらん」
手ぬぐいを出して龍太郎おじいさんは赤くなった目元を拭う。
なんだか心が痛んでわたしも悲しくなった。
そっか。
龍太郎おじいさんはもう周りに誰もいないんだ。子どもがないまま奥さんも亡くして……。
でも、とわたしはじんわりと滲む涙を拭い、なるべく明るい笑顔を作った。
「わたし、また遊びに来ていいですか?」
たぶん龍太郎おじいさんには聞こえないけど、文字では思いが伝わらない気がして。声に出して言いたかった。
『また、遊びに来ますね。いろんなお話を聞きたいです』
わたしがスケッチブックにそう書くと、龍太郎おじいさんはしわくちゃの顔で笑い、涙を流しながらわたしの手を取った。
「わしに……こんな寂しい年寄りにわざわざ会いに来てくれるか。ありがとう……ありがとう」
龍太郎おじいさんはそれを繰り返し、繰り返し。
お昼ご飯を一緒に食べて、農作業を手伝ったあと、わたしが持ちきれなくなるくらい漬け物や大福なんかのお土産をくれた。
お礼にわたしが作ったキャラメルを持ってこよう。そう思いながら、2回目の龍ヶ縁を後にした。