赤い電車のあなたへ
6月~龍ヶ縁2
わたしはそれから毎週日曜日に龍太郎おじいさんを訪ねた。おじいさんはあの人の写真やイラストを見ても、残念ながら知らないと言う。
でも今は、どうしてもひとりぼっちの龍太郎おじいさんが放っておけなくて。毎週顔を見せにいく。
もちろんあの人探しも欠かせないから、午前中他の駅まで足を延ばし、帰りに龍ヶ縁に寄るのが習慣になった。
龍太郎おじいさんは少しずつ元気を取り戻して、わたしが訪ねた3週目にはガイドに復帰した。
「龍太郎おじいさんの元気を取り戻させてくれてありがとう。
やっぱり龍ヶ縁のガイドには、龍太郎おじいさんがいないとな」
龍太郎おじいさんを紹介してくれた駅員さんはそう言ってくれた。
龍太郎おじいさんはガイドに戻って足腰もピンシャンとしたし、遠かった耳も補聴器を借りてましになったみたいだ。
そして、わたしは龍ヶ縁に来る人たちに手当たり次第に写真とイラストを見て訊ねた。
一年前と言えばみんな考え込み、やはり知らないし覚えがないという人が大半なのは仕方ないよね。
それでもあきらめないと決意した6月最後の土曜日の夜、わたしは龍太郎おじいさんに持っていくキャラメルを作ってた。