赤い電車のあなたへ
「38度3分。こりゃあ外出しない方がいいよ」
わたしの部屋でガラス製の体温計を見た叔父さんが、のんびりと言った。
「すいません……今日朝ご飯の当番なのに……」
自分でもわかるくらいにひどい声だ。ガラガラでかすれてて、たぶんとっても聞き取りにくいと思う。異星人の声かも。
布団から起き上がれないわたしの頭をポンと叩き、叔父さんはゆるく笑った。
「病人がそんな気を使わなくていいの。病は気からだし、ゆっくり休みなさい。ぺんぎん屋にも連絡しておくから」
「はい……お願いします」
わたしはなんとかそれだけ言うと、どんどん重くなる体と一緒に意識も沈んでゆく。
だるくて苦しいし、つらい。
叔父さんがお粥とすりおろしりんごを作ってくれたけど、わたしは自力で体すら起こせなくて。
布団を何重にも重ねて熱で体が暑いのに、何度も寒気が来てブルブルと全身を震わせた。
やだなあ、全身が心臓になったみたいにどっくんどっくん言ってる。
わたしがぐるぐるぐるぐる回ってる。
船に乗ったみたいにぜんぶが揺れてる。
頭が重いし、ぼーっとした。