赤い電車のあなたへ
わたしに気遣ってくれたのか、ひそひそと声を潜めた会話が意識に入ってきた。
「本当につらそうですね。かわいそう……今日はもしかしたら、って言ってたのに」
たぶんこれはほたる。
わたしの言ったことを覚えて心配してくれたのが嬉しい。
で、夏樹らしき声が応じた。
「なら、今日は俺たちで捜すか。鞠は大事なソイツにどうしても会いたいんだろ?」
……?
夏樹らしき声に、わたしは引っかかりを感じた。
どうして夏樹は、わたしが大事な人を捜していると知っているのかな?
心配させたくないからわたしから話した事はないし、ほたるにも立野先輩にも口止めはしたはず。
ましてやほたるはわたしの気持ちを知ってるから、いくら夏樹にでもペラペラ喋るなんてないよね。
でも、夏樹は現実に知ってるの?
「あたしは構いませんが、いいんですか? 街のあのイベント、開催は今日までですけど。先輩はそのイベントにどうしても行きたかったんじゃ……」
ほたるが夏樹に問いかける。