赤い電車のあなたへ



うわあ、うわあ~!


いやだ。わたしはいったいどんなことを喋ったの?


無意識だから記憶にもなくて。恥ずかしすぎて、夏樹と顔を合わせられないよ!


その場に夏樹がいたわけじゃないのに、わたしは両手で顔を覆った。


「おい、鞠。ちょっといいか?」


ふすま越しに聞こえたのは、夏樹の声で。わたしの小さい胸は、トランポリンで跳ねたみたいに弾んだ。


ふ、ふつうにしなきゃ。


今日は夏樹がわたしの事を考えて協力してくれたんだし、もともとわたしが寝言なんて言うから悪いんだ。夏樹は何にも悪くはないよ。


い、意識なんかしちゃダメ。


とはいっても、やっぱり恥ずかしいよ!


頭は理解しているんだけど、わたしのもろもろを夏樹がどれだけ知ったかを想像しただけで逃げたくなる。


なかなか返事しないわたしの代わりに、ほたるが夏樹に答えてくれた。


「夏樹、鞠の具合はいいみたいだけど。何か用なの?」


「ああ、待ち人来たるかな」


夏樹がそんな風な謎かけをするけど、後から聞こえてきた賑わいで、すぐに状況が分かった。


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