帝国湯へ、いらっしゃい
――
「龍ちゃん、暑くないの?」
「別に、平気」
ギュッと抱きしめ直した
「…琴」
「なあに?」
「俺、何を賭けるか決めたんだ」
「賭けないんじゃなかった?」
「そのつもりだったんだけど」
「………」
「琴のタケさんの話を聞いたら遺言のような気がして」
「………」
「だから、人生で1回だけならいいかなと思ってさ」
琴の首に顔を埋めた
「…そっかあ」
「よく、耐えたな」
「?エッチ??」
そっちじゃなくて
「一人でタケさんの話を抱えてだんだろ?」
「あー…うん」
「偉い、偉い」と、顔を埋めたまま頭を撫でた
「あの、龍ちゃんさ、そろそろ服を着ない?」
「やだね」
素肌でくっついてるのがいいのに
「風呂屋の娘のくせに」
「か、関係ないじゃん」
プッと笑ってしまった
ほんとだな。関係なかった
風呂屋の娘でも、惚れた相手の裸を見るのは照れる
風呂屋の娘でも、惚れた相手に裸を見せるのは照れる
―ギュッ
「かわいい」