帝国湯へ、いらっしゃい

ーーー

「伊藤」と同僚に呼び止められた

「ん?どした?」


「今夜暇?合コンいかない?」


いつもなら、ホイホイ付いていくのだが

「あー悪い。野暮用がある」

「そうか。また今度な」


風呂屋に行きたいんだ、とは何となく言いづらかった



家に帰ったら8時過ぎだった

部屋着に着替えて

お風呂セットと小銭入れを持って部屋をでた




「今晩は」と番台のおじさんに挨拶した

「お、兄ちゃんまた来たか」


「今日は、お風呂セットばっちりです」と自慢げに見せてしまった

俺は子供か


「ワハハ。風呂でたらあそこの台に置いておくといい」

「はい」



今日はカゴを使うと決めていたから

カゴの中に衣服を入れて

セットをもってガラス戸を開けたら


「お。来たな」

「タケさん」


タケさんの横には見知らぬ男性

「ゴンちゃん、こいつがさっき話した兄ちゃんだよ」

「ああ。名前は?」


「知らん」


ま、教えてないからな…


ゴンさんという人に聞かれたので

「伊藤です」

「下の名前は?」


「龍司」

「じゃ、龍ちゃんで」


え゛


まさか、この年で“ちゃん付け”されるとは

でも、タケさんもゴンちゃんだし……


まあいいか










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