帝国湯へ、いらっしゃい

本部に行ったらタケさんが「こっちこっち」と手招きしてる


「もうすぐ、山車と子供神輿が帰ってくるから
これ配ってくれ」と券の束を渡された



“風呂券”“そば券”

「これ、なに?」


「風呂券をもっていくと風呂がタダになる。
そば屋もだ」


へえ


「太っ腹だなあ」

「このために、ガキらは神輿を担ぐようなもんだ」


ほう


「今日だけは、親抜きで子供だけで夜に外出できる日なんだ」

「親は行かないんだ?」

「親はその間に神輿を担ぐから」


そうか。
売り上げなんて関係ないのはこういうことか


みんなを楽しませたいって思いだけなんだな


それから券を配ったら

子供に「ありがとう」と言われてしまった



ただ、配ってるだけなのに

大したことなんて、してないのにお礼を言われてしまった



…来年はもっとちゃんと手伝おう


お礼を言われて
どことなく、くすぐったい気持ちになったが

どうにも気が重い



先の琴ちゃんとのやりとりが引っ掛かっている


フラれるなら早い内がいいんだけどな


中途半端に27年生きてきたもんで

イケそうな女か、イケない女なのか

見定める癖がついた



若いときはもっと、がっついていたけど

いつからか、面倒になった


別に俺のこと好きじゃないなら“いいや”って
思うようになった


そう。仕事と同じで恋愛も適当になってきてた

だから、合コンには行っても

後引きそうな女には手をつけなかった
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