帝国湯へ、いらっしゃい
もし、今立ち上がったら
琴ちゃんを探すだろう
そしてまた、先のやりとりを思い出し
何も言わずに
声をかけずに帰るだろう
だから、通りすぎるまで座っていた方がいい
そのくせ耳は音に集中してて
この正直な体が憎たらしくもなってくる
音が小さくなった
―帰ろう
さっきより少なくなった人混みをかきわけて
規制解除された道を渡ろう
ただ、歩こう
止まっているから考えてしまうんだ
そうだろ?