帝国湯へ、いらっしゃい
まあ、確かに“モノははっきり言う”かもな
でも自分の気持ちが分かってないってところか
“変な小細工なしのがいいと思うよ”
「じゃあ」と言って
琴ちゃんの顔を半ば無理やりこちらに向けて
「俺に惚れて」
そしたら、見る見るうちに琴ちゃんの顔が赤くなってきて
「~~~ーーーっっ」
お?反応が変わったぞ
「ダメ?」と額をくっつけてみたら
バッと顔を下に向けた
“初心(うぶ)だから”
なるほどな
「顔を逸らすな」と言って、下を向いてる顔をまた上に向かせた
「う~~ーーーっっ」と顔をは俺の方を向いてるのに目線は必死に横を見てる
やば
「かわいい」
また、顔を赤くした
この顔が赤いのは釜の温度のせいじゃないだろ?
そうだろ?
崩し方、見つけた
「そんな顔したら」
コイツ、散々男の大事な所みても平気なくせに
いつも威勢のいい発言ばかりするくせに
「襲うぞ」
「~~~~ーーーーっ!!!!!」
本当は全然、慣れてない
ただの強がりだ
だから、かわしたり避けたり、逃げたりするのがうまいんだ
分かったぞ
今から
お前を
お前の作った囲いを
崩してやる
せいぜい、必死になって守るがいい
お前の王将は俺が
奪う
パッと手を離した
「戦法、教えてくれるんだろ」
「え?」
「俺はいつでも暇だから都合のいい時に声をかけて」
それだけ言って立ちあがった
大事なのは引き際
「仕事の邪魔して悪かったな」
室内から出る時に
「……ラベンダー湯来る?」と前と同じ質問をされた
だから今度は「後で来るよ」と振り向かずに答えた
勝負はまだ始まっていない
これからだ
決めたんだ
いつか、勝つと
いつか、強くなると
ーーー俺は決めたんだ