帝国湯へ、いらっしゃい

まあ、確かに“モノははっきり言う”かもな
でも自分の気持ちが分かってないってところか


“変な小細工なしのがいいと思うよ”


「じゃあ」と言って

琴ちゃんの顔を半ば無理やりこちらに向けて


「俺に惚れて」



そしたら、見る見るうちに琴ちゃんの顔が赤くなってきて

「~~~ーーーっっ」



お?反応が変わったぞ


「ダメ?」と額をくっつけてみたら

バッと顔を下に向けた


“初心(うぶ)だから”


なるほどな


「顔を逸らすな」と言って、下を向いてる顔をまた上に向かせた


「う~~ーーーっっ」と顔をは俺の方を向いてるのに目線は必死に横を見てる




やば


「かわいい」

また、顔を赤くした


この顔が赤いのは釜の温度のせいじゃないだろ?
そうだろ?



崩し方、見つけた


「そんな顔したら」


コイツ、散々男の大事な所みても平気なくせに

いつも威勢のいい発言ばかりするくせに


「襲うぞ」

「~~~~ーーーーっ!!!!!」



本当は全然、慣れてない

ただの強がりだ


だから、かわしたり避けたり、逃げたりするのがうまいんだ



分かったぞ



今から

お前を


お前の作った囲いを

崩してやる



せいぜい、必死になって守るがいい

お前の王将は俺が


奪う





パッと手を離した


「戦法、教えてくれるんだろ」

「え?」


「俺はいつでも暇だから都合のいい時に声をかけて」

それだけ言って立ちあがった



大事なのは引き際




「仕事の邪魔して悪かったな」


室内から出る時に

「……ラベンダー湯来る?」と前と同じ質問をされた


だから今度は「後で来るよ」と振り向かずに答えた



勝負はまだ始まっていない

これからだ



決めたんだ

いつか、勝つと
いつか、強くなると


ーーー俺は決めたんだ





< 72 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop