お姫様と若頭様。2nd
そんなある日、突然愛おしく優しい、
あの声が聞こえた。
懐かしい。
でも少し緊張と疲れを含んだその声。
今、手の届く場所にその温もりがある。
そう思うと自然に、体は反応していた。
彼女を欲していた。
「…ヨル…」
他の人じゃ埋められない隙間を
彼女が埋めてくれた。
でも彼女がいなくなったことで
再び隙間が出来てしまった。
もう、俺の手の届かないところへは
絶対に行かないで欲しい。
そう願うのに、彼女はいつも
俺の手の中からスルリと抜けていく。
ーパタンッ
扉の閉まる音が、やけに重く聞こえた。