お姫様と若頭様。2nd



涙が十分治まった頃、行きの時に置いた
バイクの元へ向かった。



そこには無表情でタバコを吸う赤司の姿があって、静かに歩み寄った。




私の存在に気づいていたのかこちらを
見ずに行くぞと告げるとタバコを消して
バイクに跨った。



なぜかその背中に、行きでは思わなかった彼の姿を思い出した。



前よくこんな風に彼にバイクの後ろに乗せてもらってドライブしたっけ。


私は自分で乗れるって言ったのにわざわざ脇に手を挟んで乗せてくれて。

そもそも私バイク乗れるのに
俺の後ろだって言い張って。



きっとこの先叶わない、過去の思い出。





そんなことを思っているうちにボーッと
していたのか声をかけられた。


その声に我に返ると急いで乗った。





「…振り落としてもいいから飛ばして」




聞こえるかもわからないほど
小さく呟いた。



このままいっそ、記憶も一緒に
振り払ってくれたら良いのに。





…なんて、
それが怖くてできない臆病者の私。







たとえどんなに苦しい過去だろうと、
彼との"想い出"は忘れたくないから。






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