お姫様と若頭様。2nd
暫く門の前で突っ立ったままでいると、
今までずっと黙っていた赤司が急に口火を切った。
「…俺はここで帰る」
その言葉に正直驚いた。
だって、赤司は中まで着いて来てくれると思ったから。
するとそんな私に気づいたのか肩を竦め
「俺あいつ苦手だ」と苦笑いで言った。
赤司に苦手なものなんてないと思っていた私にはそれは意外で、
「…私も」と少しだけ笑って返した。
でも急に表情を引き締めた彼。
私の方を真剣に見つめる彼の瞳はどこか濁っているように見えるけど、
実はただ深いだけの澄んだ色。
私とは違う、希望の色。
「…赤司組は峯ヶ濱に逆らえない。
きっとこれからお前がここを継いでも、
この関係は変わらない。
俺の族やお前の族がずっと敵対しているように一度なってしまったものを元に戻すのは難しい。
直すより、壊す方がずっと簡単だ。
俺はそれを身を以て感じて来た」
赤司だけが抱える赤司の過去。
私だけが抱える私の過去。
きっと近くて遠い、私と赤司の未来。
「赤司組前組長を倒したのには、きっと
皆が知るより深い訳がある。
…ごめん赤司、私勝手に調べた。
……赤司組の本当の黒幕は"私たち"
そうでしょう?」