お姫様と若頭様。2nd
私の問いに答えず、
ジッとこちらを見る彼。
その瞳はどこか、私の真意を探っているかに見えた。
「…俺はその言葉に頷くことも、首を振ることも出来ねぇよ。
それが赤司組の頭としての威厳だ。
…でも結局、それが本当かどうかはお前が継いだらわかることだ。
たとえ俺が赤司組の裏切り者でなかったとしてもどうってことはねぇ。
……来たぞ」
突然私から視線をそらした赤司。
そしてその視線の先にいたのは…
「楪さん、早く戻りなさい」
スラッとした体。
キリッとつり上がった厳しい目。
丁寧に施されたメイク。
キチンと着られた高級感漂う服。
首元や手首に輝く数々のジュエリー。
そしてこの、独特な雰囲気。
「…お母様」
自分を溺愛し、地位や名誉の為に私を後継者へと仕立て上げた、心底私を嫌う生みの親。
「いつまでそこにいるのですか?
私やあの人に、
これ以上迷惑をかけないで頂戴。
そちらにいらっしゃる方とも早く離れなさい。あなたが構う人ではないわ」
いつだってこの人にとって私は峯ヶ濱の後継者で。
峯ヶ濱に不利益となるものはいつも私から遠ざけて来た。
この人にとって赤司は峯ヶ濱とは関わって欲しくない人なのだ。
たとえどんなに赤司が峯ヶ濱に協力してくれていたとしても。