お姫様と若頭様。2nd
Take29
夕梛が私の執事を外され、そして峯ヶ濱の仕事を再開して早くも一ヶ月が経とうとしていた。
私の生活は以前と大きく異なった。
今まであまり参加していなかったパーティーには必ず出席したり、
他の会社との取引の際には私も同行するようになったりと、
私が跡を継ぐ準備が
着々と進められて行った。
そのため学校に行く時間もあまり取れなくなりテストで点を稼ぐことを条件にテストや用事があった場合のみ出席した。
それでも学校に顔を出した際は今まで以上に愛想を振りまき後継者としての信頼を得ることに尽力した。
考え事をする暇さえ無いほど、
私は仕事に明け暮れていった。
少しでも、彼のことを思い出さないようにするために。
彼は今どうしているだとか、調べれば出てくるかもしれない。
今どこにいて、何をして…。
私の知らない彼がきっと今はたくさんいるのだろう。
あの頃の彼のように、今も私を好きでいてくれるという確証は無い。
むしろ私のことを恨んでいるかもしれないし、忘れてしまったかもしれない。
それほどのことを、私は彼にしてしまったから。
私と彼との接点は、
もう絶たれたも同然だった。
結局私と彼は、
ただの"峯ヶ濱の後継者"と"紅蓮総長"
そんな肩書きを持つ、一生関わることのないはずだった他人だ。
彼が私を忘れようと、
彼が私を恨もうと、
今となってはもう関係のないことだ。
私が彼や紅蓮に関わることは、
もう一生ないのだから。