お姫様と若頭様。2nd
信じられるものも信じられないものも、
私と彼には関係なかったのに。
きっと彼は全ての人を信じ、
私は全ての人を疑った。
だけど私たちはなぜか、
気持ちが通ったのだから。
一時は分かり合えたのだから。
もし信じるものが生まれたとしたら、当時の彼はどれほど喜んでくれただろう。
もし信じられないものが生まれたら、どれほど悲しんでくれたのだろう。
私は今、信じれるものなど何もない。
きっと彼を悲しませることしか今の私にはできない。
会わない方がいいと望んだのは私。
だけど、
そのために悲しんだのも私だった。
今もまだ信じられない。
私がこんな大きな財閥の
後継者だなんて。
紅蓮のような大きな族の
トップに立っていたなんて。
私にそんな価値がないことは自分でわかっていた。
だからこそ皆の、
"総長はあなたしかいない"って言葉は、
どこか現実味のない言葉だった。
私を総長にしてくれたのは
私を総長に指名した人だけではなく、
紅蓮の皆だった。
だけど峯ヶ濱の後継者にしてくれたのは
誰でもない。
私の運命だったのだ。
ここに生まれたその瞬間、私が後継者になることは決まっていたのだから。
元から支持してくれる人なんていない。
全て権力などで強制的に得たもの。
自ら勝ち取った物など何もない。
そこにたとえ私を破滅へと導くものが
あったとしても、
私はそれに頼らなければならないのだ。
私の味方は、
もうどこにもいない。